唐津市鎮西町松島 高平ハツネさん(大5生)

 むかし。

お爺さんとお婆さんがおってですよ。

そしてあの、お爺さんが狸狩りに行ってですね。

そして、狸捕ってきてから、括(くく)って吊り下げとったら。

そして、側でお婆ちゃんが麦搗きよった。

そしてまた、お爺ちゃん。

山に行っとっとですよ、括(くく)ってから。

「『幾ら許してやらんね』て、言うたっちゃ、許してやんなよう」言うて、

行っとっとですけれども、

「お婆ちゃん、少しほどいて。この綱をほどいて。

そしたら、僕が麦搗いてやるやから」て、言うとですけども、

「お爺ちゃんから叱られるから、嫌(いや)」て言うたら、

「いんにゃ、そんな言わずに少しほどいてくれんね」て、

(あんま)り責められてから、少しずつほときよったら、

とうとうほといてしもうて。そしてもう、

最初には麦搗いて加勢しよったですけど、最初にゃお婆さんの頭まで

搗いてから殺してしまった、お婆ちゃんを。

そして狸の方が、お婆ちゃんを炊いとっとですよね。煮て食べとっとですよ。

そしてお爺さんが来たら、

「狸を炊いとるから、料理(りょう)って炊いとるから、食べなさい」と、

言ってから、お爺さんは食べよっかあと思って、狸はもう逃げながら、

「爺が婆食った。爺が婆食った。棚の上お曲突(くど)の隅の方に見しゃ」

て言うて、逃げて行ったとかて。

そして見たら、殺してしもうたお婆さんをビックリしてからもう、

またその敵(かたぎ)を討って。

二番目にゃ、何か泥舟作ってから、お爺ちゃんのは木舟作って。

そして狸の方、沖の方にやっとったそうですよ。

そして、お爺やんの方はへたの方におってかから、

「取れたかね」て、お爺ちゃんが叫(おら)ぶ時ゃあは、

「取れた時ゃ取れた。取れた時は取れん」て言うて、

「舟を叩かんね」て、言うとったそうですよ。

そしてお爺ちゃんが、

「まあーだ取れん。ドロスコドンドン」て叩いたら、今度(こんだ)あ狸が、

「まあーだ取れん。ドロスコドンドン」て、叩きよったそうです。

とうとう泥舟で、溺れてしもうて、おうとう狸が泳いでまた、来たそうです。

そいで、今度(こんだ)あ三番目にゃ、家を作りおったそうです。

作りおったところが、

「何する家じゃろうか。お爺ちゃんな家作りおっ」て、言うてきたそうです。

「うーん。お前加勢(かせ)せんね。家作りおっけん」て言うたら、

「うーん。加勢しよう」と言うて。

「お前は家の中に入っとって、張さしにならんね」

て言うて、なしよったそうです。

こう、縄を張りに通してするでしょうが。

あれになっとったそうです。

もう出先ゃなかごとふたいでしもうて。

そいで最後に、カチカチ言うて火をつけておったそうですたい。

昔は石のあれじゃったそうですけん。そしたら、

「お爺ちゃん、カチカチいうた何(なん)かい」

て、狸が言うたそうですたい。

「カチカチ山の通る時ゃあ、黙っとれ」

て、言いよったそうです。

「はい」て言うて、またしよったそうですたい。

今度(こんだぁ)、ボウボウ火がついてから、

ボウボウ言うたあ何(なん)かい」て。

「ボウボウ鳥の通っ時ゃ黙っとけぇ」て、言うたそうですたい。

ちょうど燃えてから狸が火傷してから、寝とったら、

見舞いに誰かしらん来とっとよね。

見舞いしてもろうて、治(よう)なってから、最後が舟じゃった。

溺れてとうとう死んどっとですよ。

〔三二C〕類話

(出典 未発刊)

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