佐賀市長瀬町 納富信子さん(大14生)

 近松門左衛門が縁側に出てね、浄瑠璃を書いて、それに句読点を打っていたそうですよ。

そうしたら、出入りの数珠屋が来てね、

「近松さん、浄瑠璃にも、そがん句読点を打たんといかんですか」て、笑うたて。

そいぎ、近松門左衛門な、そん時は、何(なーん)も言わんやったて。

そしたところが、明くる日になって、自分の家(うち)の使用人に、

「これを数珠屋に持って行って、注文して来い」ち言(ゅ)うてね、

「二重(ふたえ)に曲げ、てくびにかけるような数珠」て、言う注文をしたて。

そいぎ、数珠屋は二重(ふたえ)にかけて、くびにかけるような数珠を持って来たわけ。

そしたら、近松門左衛門が、

「これは注文と違う。俺が注文したのは、二重(ふたえ)に曲げ、てくびにかけるような数珠じゃ。

お前んとは、二重に曲げて、くびにかけるような数珠じゃなかか。

こいで、句読点のいるか、いらんか、わかったじゃろう」て、言いなったて。

 

(出典 さが昔話 P49)

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