嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)
ある時ねぇ、ヒョイヒョイと道を通いよんさったらねぇ、
馬ん糞のいっぱいドタンドタンて落ちとったて。
そいばねぇ、野狐のヒョロッと来て、一生懸命丸めて横の方に箱のあっとに、
コウコウ入れて一時(いっとき)したぎぃ、笹の葉ば載せたぎぃ、
立派な簪(かんざし)ばつけた娘さんに化けることができた。
そうして、その重箱をきれいに、あの、風呂敷で包んで、
持ってねぇ、自分の里帰りをしてねぇ。そうして、
「今晩は。来たよーう」て言うて、お家(うち)に来て。そいで、その重箱を、
「こい、ぼた餅ば家からいっちょやんさいた」て。
そいぎぃ、その、ある下(しも)の方からほんな人間のつんのう(後ろカラツイテ)て来て、
ありゃあ、ありゃあ。馬の糞ば重箱に入れとっ。
食べんさらんぎ良かいどん、
「アッ」ち、声ばかくっぎぃ、その野狐がまた化けの皮がはがれて、
良(ゆ)うなかろうだいと思うて、ハラハラ、ハラハラして、障子の穴から見ゆっ。
そぎゃん話のある。
(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P817)