むかーしむかしねぇ。
天下を握っとった平家がねぇ、
「奢る者は久しからず」で、壇の浦の戦いで敗れて負けて、
一門の者は海の藻屑となり、落人になってしもうたと。
平家が源氏に負けたて。
そん時ねぇ、三位中将の平惟盛さんていうその人も大将じゃったいどん、
壇の浦からズーッと命からがら九州さん、ズーッと逃げのびて来んさったて。
そうして、久間(佐賀県嬉野市塩田町)まで来んさったと。
ところがね、馬に乗らじねぇ、そん時、惟盛さん、牛に乗って来(き)んさった。
ところがね、そうして、久間に着きんさったいどん、
その牛がね、とうとう倒れたてよう、長い旅で疲れて。
そいぎねぇ、太か牛のもう歩きえんごとなって、
息ば引き取ってしもうたもんじゃい、仕方なかあ、と思うて、
そこん辺(たい)の村人達に、助けられて、
そこん辺(たり)穴ば掘ってね、埋めんさった。
そうして、石碑を墓の後ろに建てんさったと。
牛石社ち言うて、未だにそれが残っております。
そいばあっきゃ。
[一二四 自然説明伝説(塚)]
(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P812)