嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)
むかーしむかし。
猿どんと蟹【tがね】どんと餅米拾いぎゃ行きやったちゅう。
田圃ん中には餅米のパラパラ落ちとったちゅうもんねぇ。
そいぎぃ、袋ば持って二人【ふちゃい】連れ餅米ば、
「じき正月じゃもん」ち言【ゅ】うて、拾いおって、
「あんたんたあ、いっぴゃあなったかーん」て。
「いんにゃあ【イイエ】、まあーだいっぴゃならんばーん」て。
そいぎぃ、また猿さんが蟹さんに、
「お前【まい】さんとは、いっぴゃあなったかーん」
て、聞いたちゅう。
「いんにゃあ、まあーだいっぴゃならーん」
そいぎぃ、こうして見てみっぎぃ、
蟹さんのとは穴の大きかとが開いて途中からこぼれてきおった。
そいまで拾うて、お猿ちゃんな自分の袋に入れるもんだから、
もうすぐにいっぱいになって、
「もう、俺【おい】がとはいっぴゃあなったけん、
我が家【え】帰っ」て言うて、穴に入【はい】ろうでしたら、
「こん畜生【ちきしょう】、敵【かたぎ】ば取っ」て。
「俺【おい】がとまで持ってはって」ち言【ゅ】うて、
まだよく穴に入りきらんお尻を蟹さんがつついたら、
もう、お尻を猿さんはつつかれて痛かったろうねぇ、
真っ赤になって、今だに赤【あこ】うしとっとよう。
そいばあっきゃ。
[二三 猿と蟹の寄合餅(cf.AT九C)] (出典 蒲原タツエ媼の語る843話P5)