神埼市神埼町横武 馬場崎タツさん (明12生)
お婆さんが川へ洗濯に、お爺さんが山に柴刈りに行ったて。
そん所(とこれ)ぇ、洗濯しよっ所(とこれ)ぇ、桃がブカブカ流れて来たて。
そいぎい、お婆さんが拾うて、
られても にノにご れ
そしてお爺さんが帰って来んさって(来られて)から、この桃ば、
あぎゃん〔あのように〕と、割ろうで思うてなた〔ですね〕、
そこん所ぇ、そのお爺さんが帰って来んさった。桃の中から
立派(じっぱ)な桃太郎さんが生まれんさったてなた。そうして、お婆さんに、
「団子ば、黍(きび)団子ば作ってくいろ(くれ)」て言(ゆ)うて。
そいぎい、いちばんから犬、猿から何もかんも〔何はともあれ〕、家来になって来ってなた。そいけんさい「一つ黍団子ばくださいね」て、そがん遊言うてっさい。
「あの、鬼征伐について来んないば〔来るならば〕、くるっ〔やる〕」てなた。
そいぎい、そがん(そのように)言うて、ずっと桃太郎さんの何でんかんでん〔何でもかんでも〕、おんもんなたあ〔いるんですよね〕。そいぎい、
つんのうて〔ついて来て〕行たじゃろうが。
そいぎい、推子(きじ)が偵察、猿が引いて、引き出(じ)ゃあてなた。
そして鬼征伐に行くて。
そいで、立派(じっぱ)い鬼征伐ばして来んさって〔来られた〕。
そいぎ、その、お爺さんとお婆さんは、ちょっと家に残って
おんさったじゃろう〔おられたでしょう〕が。喜びんさったて。
〔大成 一四三 桃の子太郎(cf.AT五一三A)〕
(出典 吉野ケ里の民話 P60 )