嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

むかーしむかしねぇ。

あの、お釈迦さんが、

「一年中あの、区切って動物の歳にしようかあ。

動物の歳を決みゅうかあ」て言うことを、お触れになりました。

そうすると、そいから先にもう、

動物達ゃ誰【だい】でん、

鼠でん、猫でん、牛でん、猿でんが、

あの、鳥【とい】でんが、

「私【あたい】どんが歳になっ」ち言【ゅ】うて、

喜びいさんどったて。

そいぎぃ、ちょうどその、

あっちこっち、コソコソしよったけん、

猫は確かに直接には聞かんじゃったいどん、

鼠どんが、あの、猫は我がば追いかけてばあっかいおっけん、

ちぃった一日ぐりゃあ違わせて遅かとにしゅう、

て思うたもんだから、

「あの、何月何日には、あの、お釈迦さんのこうして、

我々の歳ば一月【ひとつき】ずつ区切ってくんさってばあーい」て。

あいどん、鼠は猫に一日遅らかして教えたて。

ところが、牛さんの所【とけ】ぇ行ったぎぃ、

牛さんなもう、チャーアンと、そのことば知っとんしゃったて。

そいぎぃ、

「牛さん。あんたはノロノロ歩くどん、

あんたは図体の太うかもん。

あんたの背中に私【わし】を乗せてくれんやあ」て、言うたぎぃ、

「えぇ、えぇ、いいよ。

私【わし】ゃノロノロ歩くでもう、

二、三日前から歩いて、お釈迦さんの所【とけ】ぇ行きおろう」

て言うて、もう三日も前から自分の家【うち】から出かけたて。

そいぎぃ、鼠は、こう乗っとったけど、

お釈迦さんの住まいまで行たぎぃ、

まあーだ誰【だい】も来とらんじゃったあ。

ところが、今日の夜明けは、

いよいよ誰【だい】でん集まって来っばあーいていう時、

ご門がヒャーッて、開いたぎぃ、

ああ、開いたあと思うて、

鼠は牛の背中からヒャーッて、跳び出て、

あの、ご門の所【とこ】に行たぎぃ、

「お前【まい】がいちばん口かあ」て、門番は言うた。

「はい。左様でございます」て言うて、

小【こま】ーか鼠はすましとった。

そいぎぃ、後は来た順に並ばせたもんだから、

鼠はいのいちばんで、

「子・丑・寅・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」

ち言【ゅ】うて、

お釈迦さんは一月【ひとつき】ごとの歳を

動物達にお与えになりましたて。

ところが、こうして見たぎ猫がおらん。

一日【ひして】過ぎてから、お釈迦さんの所【とけ】ぇ、

「あらー、今日が歳定めじゃったから来たのに」て、言うたら、

「お前は一日遅かったあ。もう入れることはできん」と、

お釈迦さんから言われて、

「あん畜生【ちきしょう】」ち言【ゅ】うて、

鼠を自分の敵【かたぎ】のごと、

そいから追いまわすごとなりました。

そいばあっかい。

[一二 十二支由来(AT二七五)] (出典 蒲原タツエ媼の語る843話P3)

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