嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかし。

蜂さんと蟻【あり】さんと蜘蛛【くも】さんがねぇ、

そろってお祭り見物に行かしたちゅう。

あったぎお祭りは、

もうドンドンヒャラヒャラ、ピーヒョロヒョロで、

恐ーろしか賑【にぎ】やかかってぇ。

面白か物も沢山【よんにゅう】おったちゅうもんねぇ。

そいぎぃ、その、蟻さんも蜂さんも

グルグル、グルグル何遍でん、お祭りの所【とこ】ば回って、

そうして見つけよったぎねぇ、蟻さんの小【こま】ーかとのさい、

何【なん】じゃいにけつまずいて、ホホーッて、倒れたて。

あったぎぃ、そけぇあっとの財布の落ちとったちゅうもん。

そいぎ蜘蛛さんも、

「蟻さん良かったねぇ。お前【まい】、運の良かったばーい」

ち言【ゅ】うて、ほんにあの、珍しがったて。

「そいぎぃ、見てみゅうかあ。幾ら入【はい】っとるかあ」

ち言【ゅ】うて、財布を見てみたぎぃ、

十七文入っとったちゅう。

「ぎゃん沢山【よんにゅう】銭【ぜん】の入【い】っとったあ。

あいば全部【しっきゃ】あでわけようかあ」

て、言うことになって、

「そいぎぃ、どがんしてわきゅうかあ。

良か方法ば、いっちょ考えてわけんばねぇ」て言うて、

言いよったば、じき蜂さんがねぇ、

「俺【おい】が蜂だから、八文貰【もら】うよう」て、

横から言うた。

そいぎすかさず今【こん】度【だ】あ、蜘蛛さんがさ、

「俺【おい】は、そいぎ九文だね。

そいぎ蜂さんは八文、俺は九文。二人で貰おう」

て、言うことに言いよったぎねぇ、蟻がさ、

「冗談【ぞうたん】のごと、見つけたとは我が見つけたとこれぇ、

お前【まい】達の後【あと】は何【なーん】もなかごとにゃあて

どがんしゅんなか」て言うてね、

「私【わし】ゃねぇ、蟻だから

ある物は全部【しっきゃ】あ、私【わたし】が貰うよう」

て言うて、その財布の紐を引っ張って

穴ん中【なき】ゃあ入【ひゃ】あってしもうたちゅう。

チャンチャン。

[九 拾い物分配(類話)] (出典 蒲原タツエ媼の語る843話P2)

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