鳥栖市田代上町 磯野哲夫さん(明29生)
猿と蟹が、河原で遊びよったげな。
ところが、おむすびが流れてきた。
蟹が、それを、拾うたげな。
それから、お猿が、
「それを俺にくれれ」と、言うたげな。
蟹が、
「くれん」と言うた。
「それならば」と言うて、
猿が、蟹に、喧嘩を持ちかけた。
そこで、蟹は、いち早く、
猿のお尻を大きなはさみで、はさんだ。
そこで、
「あ痛(いた)、痛(いた)、痛、痛。僕が負けた。
僕の毛をくるっけ、離せ」と言うて、
それで、蟹は、離してやった。
それで、蟹のはさみには、毛が生えて、
猿のお尻の毛が盗られて、
猿のお尻は、真っ赤に腫れ上がって、
猿の尻の毛はなくなった。
[二七A 蟹の仇討AT九B参照、二一〇]
(出典 鳥栖の口承文芸 P41)
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