東川登町袴野 南 権平さん(明31生)

 むかしはその。

名前は勝手に(なご)うつきゅうが、(みしこ)うつきゅうが、いっちょんその、

かんもうたことなしつけよったらしかですよ。

それでその、一番嬶が、息子一人(いっちょ)おって死んだわけたいなたあ。

そいぎぃ、二番嬶が来て、息子ば持ったちゅうわけ。

そいぎぃ、いちばん嬶の子にゃあんた、犬猫(いんねこ)呼ぶごと、チョロと。

犬猫のごと、チョロとつけてやんもん。

わが子にゃもう、人の三日みちとるけゃあにゃその、

(おり)ゃあ、やあっさんより名ばつけっくるっちゅうごたっ風で、

大抵その、(なご)う考えて、ようようしてその、わが子が出来たてぇ、夜明け。

名前がもう、人の三日、五日じゃとにかく覚えされんというごたっ風で。

そいぎぃ、その名が(なご)うして、ぎゃんつけたちゅうもんなたあ。

一滴二滴おんぼそうりんぼう それそうだが入道播磨の別当しゅうざえまん

焼山や弥次郎ひょうすのこうすけ すっぽんじょうれん

て、こうつけたもようたいなたあ。

二番嬶の子に、わが。

そいぎぃ、どうして三日、五日じゃ覚えんもんじゃいけん。

そうして兄弟(あす)うで、川は(ひゃ)あったかにゃあ。そいぎ今度(こんだ)あ、いちばん嬶の子が(かや)()ったちゅうもんなたあ。ぞいぎぃ、

「チョロ川(はい)った。チョロ川(ひゃ)らした」て。

そいぎぃ、人が来てじき助けたちゅう話なんたあ。

そいぎ今度(こんだ)あ、二番嬶の子があべこべに川入った時、今度(こんだ)ああの、川ん土手(でぇ)で、 

一滴二滴おんぼそうりんぼう それそうだが入道播磨の別当しゅうざえまん

焼山や弥次郎ひょうすのこうすけ すっぽんじょうれんな 川入れられたあ

て、こう言よっ。

何て言いよっよう、もうわからじおった、ちゅうなたあ。

そいぎぃ、そいが身投げて助からんじゃったちゅう話なたあ。

そいで、名前ば(あんま)(なご)うつけちゃあ、そう言う風なことのあっけん、

て言うことのあっですよ。

(出典 未発刊)

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