有田町泉山 池田忠一さん(明34生)
昔ゃあの、産婆さんを小銭婆(こせんぼ)さんと。
上からこう、あの、帯びのごたっとを吊(つ)って、
それこうかがい付(ち)いてですよ、後ろから抱いて。
親父、後ろから産婦を抱いてるわけです。
(小銭婆ちゅうぎぃ、婆(ばば)ですねぇ。
小銭を貰う婆ですねぇ。小銭婆ちゅう。
有田方言のうちに。そいで正式に産婆じゃなしにね、
経験婆、取り上げ婆ちいうわけですねぇ。)
ところがくらいでしょう。
昔ゃ、あのランプですからねぇ、
「まちぃっと、芯ば明(あこ)うせろ」とか言うて。
ところが、一生懸命お産しよっ。
ところが、親父がその、褌(へこ)からですねぇ、
金玉を外して、一生懸命抱えとるわけ。
小銭婆さん、一生懸命親父の金玉引っ張い出す。
そいぎぃ、出よっと思うてですねぇ。
「そや、俺(おい)がとさい」
「お父(とっ)たんのこと、わかっとったい。お父たんのこと、わかっとっ」
「俺がと、ああ、痛。ああ痛」て。
「お父たんない、痛させじよか」て。
「お前(やえ)、痛しゃせじよか」て。
「俺がとさい」
「お前のとて、わかっとう」
「俺がとやっけん、引っ張らじぃ」
「引っ張らんば出んさい」
(出典 未発刊)