唐津市鎮西町松島 高平ハツネさん(大5生)

 むかし。

お爺さんがもう、

「お正月、今年はどんなしてお正月はどんなして迎えるじゃろうか」て、

言いながら山に行って、芝刈りに行っとったらですね、

「どうして年ゃとろろ」て、言いながら、切りおったそうですたい。

そしたら、何(なん)か何処かで、

「お米でとろろ」て、言う者(もん)がおったそうですたい。

あら、今の声は何処からしたろうかねと思うて、

お爺さんがもう、ズーッと考えながら、もう一回、言うたそうですたい。

「どうして年ゃとろろ」て言うたら、

「お米でとろろ」て、言うたけん、

自分の辺(にき)に言うたごたるあると思うて、

こうして柴ばあせりよったら、小(ちい)ちゃなもう、

可愛い亀がおったそうです。

これが言うたんじゃなかろうかと思うて、手にのせてから、

お爺さんがまあ一回、

「どうして年ゃとろろ」て言うたら、その亀が首を長く出してから、

「お米でとろろ」て、言うたそうです、面白(おもしろ)―うに。

あら、こりゃ珍らしか亀じゃねと思うて、あの、

町に持って行ってですね、そんな長者のところに持って行って言うたら、

やっぱり山で言うたごと、

「お米でとろろ」て、言うたそうですよ。そしたら、

「この亀、買ってください」て言うたら、もう金持ちの長者さんが喜んでから、

「こりゃ、珍らしか亀」言うて、高くですね、買ってから。

そして、お爺さんはもう、良かお正月迎えたと聞いとりました。

(出典 未発刊)

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