呼子町小川島 鳴海常蔵さん(明42生)

 晩にですね、ともん人が産気づかすわけですたいね。

そいぎ今(こん)()あ、黒木病院のその人が、ここのお医者さんだった。

その晩に迎え来たそうですたい。

そいぎ黒木さんも産気づこうたと言うもんですけん、

働くためについて行かしたて。

そして行たて今度、もう晩じゃっけん、ともんさい行たもんの。

邸宅のあってもなかさい。

お医者さんもえらかされたいた。

そいでとっともう、ウンウンうなるもんじゃいけん、もたせたしたそうですたい。

そうしたら、そん、妊娠しよらすとのたやすう産んでしましたと。

「戻ろうかなあ」て、言わしたぎぃ、

「いんにゃあ。戻らんでよかですたい」て。

「今日はもう、たった今、夜の明くるけん、ここで過ごして行かんですか」

と、ご馳走も出たそうです。

そいでその、お金な昔の十円やったごたって。

そいで今度(こんだぁ)、自分のその、何か、持たせと言いよらした。

そいで朝、送って行たところが、

十円だったと思うとったら柴ん葉だったそうですよ。

それから、そのお医者さんは、

「こりゃあ、でけん」と、化かされとったけん。

そいから、晩には絶対に動かっさらんと。

(出典 未発刊)

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