呼子町小川島 田中 連さん(明生40まれ)

呼子町小川島 鳴海常蔵さん(明42生まれ)

 芝居にもありますばってんなあ。

阿部保(やす)()が助けるとじゃないですか。

保名が狩りに出てですね、

身持ちになった雌狐ば保名さんの側に来てですね、

まあ、助けてくれと表情したとでしょうね。そんなら、

「お前(まい)、妊娠しとった」と。

「そんなら来い」と、安全になったと。

それを今(こん)()あ、保名さんが、

あの、一人(ひとい)嫁ば貰わすわけ。(田中 連談)

あれは病気さい。

そして保名さんの葛の葉て来とって、病気して、そして自分のかやすわけ。

そん時分に、その女(おなご)の、ちょっとあの、狐のなんでんでけんけん、

やっぱい狐は化けて、女(おなご)に化けてね、

葛の葉さんに、お母さんに良う似てきた。

そいで、こうする時分に女(おなご)と男ですたい。

やっぱいできとる。

阿部保名さんがですね、やっぱい交代させられん。

そして今度あ本当な葛の葉さんが帰って来らしたけん、おらじおって、歌詠みして、

恋しくば尋ね来てみよ信田の森

ち言うて、書いて女は戻るわけもんね。

そいから生まれちからでんね、すごく食ぶるわけもんね。

それが、あれが昔の医者になるわけよね。

ところがあの、そん時分に、あの何(なん)ですか。

まあ一人の医者とですね、見合わせするわけですたい。

そう言う風に、狐の方が力を貸すわけですたい。

「こりゃ、何(なん)の入っとっ」と言えと、後でわかるわけですたい、後で。

あや、そいから童子丸ですたいな。

童子丸はあの、唐津の烏が勤めるて。

そいでね、あすこん御殿ですね、やきもち言うて、こりゃ何、片一方は何。

どっちも医者同士たいね。

天皇陛下が何かですね、病気なられて、そん、助っくっために、

どっちも旗が上がらんわけたい。

そいぎ女(おなご)が親が鼠の小かとのおっわけ。

「『迎いや来とっ』て、そがん言え」て。

そん烏まで呼(おろ)うで童子丸が聞くわけ。

そいで、それを回答するため開けてみたところが、

鼠の小さかとが十二匹とったて。

「これが本当の医者じゃ」と、いうことで医者になっていく。

(なん)すっですよ。それからすぐ信田の森さい尋(たん)ねて行くわけ。

息子と童子丸が会うたという話だけ。(鳴海常蔵談)

(出典 未発刊)

標準語版 TOPへ