鹿島市鮒越 松尾七郎さん(大14生)

 富山から薬(くすい)売いぎゃあ来(き)ござったちゅうわけ。

そいぎぃ、薬売いぎゃあ来て、

小城んにきじゃったかにゃあ、回いござったぎば、

あの、コソンコソンコソン何(なん)じゃい言いよっごたっ。

あすこんたいでは、佐賀んに来てじゃいろう、

小城ん辺(にき)じゃい、知らんばってんさい、

餅を本殺しちゅうて、そいでぼた餅は半殺しちゅう。

そいぎぃ、あの、薬売いさんの泊まいよんさったもん。

「今夜は、本殺ししゅうかあ、半殺ししゅうかあ」

ち言(ゅ)うて、話しおいござったて。

そいぎぃ、こりゃあ大変だ。

こりゃあ帰ろうかにゃあて、

わがもう、震(ふり)えたてて、えっしゃあ。

そいぎ、何のご馳走(っつう)やったち。

泊まっておったぎぃ、ぼた餅の出て来たてち。

 [大成 四一五 本殺し半殺し(cf.AT一六九八)]

(出典 未発刊)

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