鹿島市鮒越 松尾七郎さん(大14生)

 産婆さん迎え行くとは、あの、

「どぎゃんこってん一人(ひとい)じゃつまらん」

て言いよったもんなたあ。

「なしじゃいろう」ちゅうぎぃ、あの、

「一人迎え行くぎにゃあ、野狐の騙(だみ)ゃあてぇ、

わがその、何(なん)か嫁御のお産に連れて行たて、

そいでお産ばさせて、わが、金の布団に寝せて、

明日(あした)帰すどん、泊まっていけ」て言うて。

産婆さんの明くる朝、起きてみたいば、

柴ん葉ば、いっぴゃあ着せられよったて、

言うごたっ話どま聞きおったなた。

そいけん、産婆さん迎えは大概その、あの、

提灯つけて二人(ふちゃい)行きおったなた。

[大成 二八六 狐のお産(cf.AT一五六B)]

(出典 未発刊)

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