多久市北多久町中ノ原 飯盛康晴さん(明43生)
いちばん最初にですね、鶴が狸に、
「あの、俺(おい)がご馳走(っそう)すっけんが【するから】、出て来(こ)んかーあ」
と、こう言ったそうです。
すると、狸がやって来ました。
そして、鶴は、壷甕(つぼがめ)に、ご馳走を入れました。
鶴は、おいしそうに ご馳走を食べるけれど、
狸は壷甕(つぼがめ)には、口が入らないので、
まったく食べられなかったそうです。
そうしたら、狸は、今度、俺が仕返しをしてやろうと
「よーし来た」と思いました。
それから、狸は、
「おい、鶴。あの、俺がご馳走すっけんが来んかーあ」と言うと、
鶴は、
「うん。来(く)うだーあ」と答えました。
そうして、鶴は狸の所に行くと、もう皿に、ご馳走を入れて出されたそうです。
そして、狸はたくさん食べたけれど、
鶴は、皿だから、思うように食べることが出来なかったと言う話を、
よく聞いていましたよ。
そいまあっきゃ【それでおしまい】。
[大成 動物新七 鶴と狐の呼び合い]類話
(出典 多久・飯盛翁が語る佐賀の民話 P11)