有田町桑古場  友永ヤエさん(明33生)

 嫁さんに貰われらすときにねぇ、

「あの、家(うち)に嫁さんに来てくれんかあ」て言われて、

「ちょっと来てはよかばってんねぇ、自分なその、癖のある」て。そいぎぃ、

「何(なん)の癖か」て、言わしたぎねぇ、

「一か月にねぇ、屁(おなら)をいっちょずつ出さんば、

生きらんごととなっとって。私の体は」

そいぎよ、

「一か月いっちょぐりゃあなら、私どん、十日にいっちょよう。

一日(ひして)にいっちょずつでも、二つでもふっ」ち言うて、

「そんくりゃあの屁ないばよか」て言うてねぇ、貰うわしたて。

そいぎもう、嫁さんに行かしたじゃいけん、堪(こら)えて堪えてねぇ、

しとらすところ、もう、たまらんごとならしたて、嫁さんのねぇ。

そいぎもう、その嫁さんが、屁(おなら)ばふいとうしてたまらんどんよ、

「あんた、どがんかしとってくれんねぇ」て。

「ふれ」て、言わしたいどんねぇ、

「あんた、何処(どこ)まで飛ぶやらんけんよ、ねぇ、あの、大黒柱に、

あんた、ちょっと結(きび)っとくけん」ちて、

「私が、股ばふるまでねぇ、あの、結(きび)られとってくんしゃい」

て、言われてさい、

「よか、よか。ふれ」て言うて、あいしたぎよ、

大黒柱に結(きび)ってとったぎぃ、家(え)ながらねぇ、

飛ぶごたっ大きな屁ばふらしたてたい。

そいぎぃ、聟さんは大黒柱に結られとらすけん、

大黒柱はねぇ、もろともさい、

何処(どこ)まで飛んで行かしたらいどん、飛んではしったてぇ。

そいぎぃ、落ちたところがねぇ、お菓子屋じゃったて。そいぎぃ、

「あらー。あんた、こがんして飛んで来て、ほんにきつかったろう」

ち言(ゅ)うて、

お菓子屋のお父さんが解(ほと)いてよ、そしてまあ、

「お茶一服飲みなさい」ちてねぇ、出してねぇ。

そして、お茶うけにせんぺいば出さしたて。

そいぎぃ、その聟さんがよ、泣かしたて。そいぎぃ、

「あなた、なして、あの、嫌いですか。せんぺいは嫌いですか」

て、聞かしたぎよ、

「私(あたし)、嫁のねぇ、屁一発でねぇ、ここませ飛んで来たけんばい、

せんぺい食べたら何処まで飛ぶかわからん」て。

(出典 未発刊)

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