鹿島市鮒越 松尾七郎さん(大14生)

 あの、私どま終戦前、あの、ほら、学校卒業したじき時分に、

ここん辺(たい)も、あの、田舎やったけん、

夜警ちゅうてありよったもんなあ。

そいぎぃ、あの、おどまあ、学校卒業したばかい。

あの、部落からは年寄りの来たいして、

二、三人ずつ夜警ばしおったですよ。

その中で、年寄りさんたちの話聞かせよいござった。

佐賀ん辺(にき)でも話のあいよったしらせんもん。

佐賀のがたよんさんちゅうとのおいないよったて。

そいぎその人の、その、

「蟹(がね)かめや行こう」ち言(ゅ)うて、

仲間で、あの、行きござったて。

そいぎぃ、蟹かめぎゃ行たいば、

その、やっぱいそこに、あがんとじゃなかですか。

その、アゲマキも出てきたとじゃなかですか。

そいぎご膳の上、そのがめとか、アゲマキとか乗っとたとば、

「どぎゃんして、こりゃあ食うぎよかとかい」て、

山ん者(もん)じゃいけん、言いござったて。

「そいじゃ、褌(へこ)はずして食わんばらんぼう」

て、言いござったて。そいぎにゃその、

「そぎゃんやー」ち言(ゅ)うて、わが褌ば外(はじ)-て、

ご膳の上の乗せて、そして食(き)いござったーあて言うて。

そいぎもう、夜警どんしゅうよいか、

その話ば聞いとったがましじゃろう。

そぎゃん話ば聞きよったですよ。

〔笑話、愚か者〕

[大成 三一五 蟹の褌(cf.AT一三三九)]

(出典 未発刊)

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