三田川町目達原 荒木チヨさん(大2生)

 あのね、石動丸のお父さんは、もう殿さんでしょうね。

ところが、そのお嫁さんと、あの、いわば

お手掛けさんと、表面はとてもよかって。

そいぎもう、表面はよかもんじゃいけん、よかと思うて、

ないしとってやったぎぃ、何時(いつ)かちょっと物陰から見たら

もう、とても嫁さんと、そのお手掛けさん、髪毛の逆立ってね、

にらみ合うといござったと。そいで、その、

「これは」ち言(ゆ)うことで、あの、

お坊さんの方に行かれたちゅうことですね。

そして、お坊さんになられて。

そして、ご修業されおった所に、子供のその石動丸ちゅうのがね、

会いに行くでしょう。

そうしたら、会いに行きよったところが、お母さんと行きよったら、

ところが、ありゃ高野山ですかなあ。

あつこは女人禁制ですから、自分一人で行きよったところに、

その、衣と衣がすれ合うでしょうが。

そいで、はっとして、ないしたところが、あぁ、これがお父さんじゃなかろうかと。

こりゃ、子供じゃなかろうかて。

そして、子供と言うことを名乗られずにね、

もう泣く泣くその、別れられたと言うような。

(出典 未発刊)

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