嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしねぇ。

長者さんの家(うち)には沢山の奉公人がおったもん。そいぎぃ、飯炊き婆さんが大きな飯櫃(めしびつ)を抱えてきて、奉公人達に言いました。

「あんた達、こっち側は食べてくんしゃんな、西側の方ば食べるんだよう。わかったねぇ。こっち側は食べじぃ、西側を食べてくんしゃい。わかったねぇ」ち、奉公人たちに言うて、出て行きましたて。

そいぎぃ、奉公人の中にぬけ目のなか人がいたもんねぇ。そん人が、飯櫃(めしびつ)に手をかけてクルーッと、半分回(ま)ゃあてさ、

「さあ、皆、戴こうよう」と呼んで、西側の方のお米の真っ白いおまんまをさ、お腹いっぱい食べんしゃったちゅう。

ところが、東側は麦飯じゃったてぇ。そいぎぃ、白い飯の米の飯の方ばねぇ、

「美味(おい)しい、美味(うま)か美味か」て言うて、ちぃ(接頭語的な用法)食べてしもうて、麦飯のところば残しとったちゅう。

そいばあっきゃ。

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P636)

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