嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかしねぇ。

こぎゃんことば役人さん達が話よったて。

「家は木てん金てんて建ててやいどん、竹の家ちゅうて見たことはなかねぇ」て。「竹の家、いっちょんなかねぇ」て。

あったぎぃ、すぐそこの横(よこ)背(せ)の子どん、恐ろしゅう気の利いたごと、顔しとったて。

「お役人さん。竹の家だって、竹で作っぎできんこともなかよう。竹の家だってでくいよう」て言うて。そいぎ役人達も大人じゃったけん、

「あーいどん、竹の家なんて作っぎできゅうで、見たごとなかなあ」て言うた。そいぎぃ、その子が言うには、

「私(わし)が竹の家ば作ったこんな、あんた達は私(わし)の家来になるか」て聞いたら、

「うん。そりゃあ、家来になる、なる」て、役人達がちぃ言うたて。

そいぎねぇ、その子は自分の家(うち)の裏山で竹の子の立った時から考えてねぇ、我が背の高さのところん辺(にき)は孔(あな)開けたて。八本も開けた。そうしてねぇ、だんだん竹の子は孔を開けられてね、竹だったちゅうもんねぇ。竹も孔の開けられたとこよい高(たこ)うなった。そいぎぃ、その上ん方はちょん切って、孔んところにねぇ、別の竹ば差し込んだい、また竹を持って来て屋根やら、壁も竹で作ってねぇ、扉まで作ったて。そうしてねぇ、あの役人さん達ばねぇ、呼うで、

「ほら、竹の家の珍(ちん)築(ちく)祝いばい」ち言(ゅ)うて、その、竹の家てなかねぇ、て言うた人(と)を呼うだ。

そうして、とうとう三人のね、子供の家来にならしたちゅう。

チャンチャン。

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P586)

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