嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかし。

とても金持ちの長者さんがおったてぇ。そこの一(ひと)人(い)息子さんが病気になったちゅうもんねぇ。そいぎぃ、「薬や呪いや」ち言(ゅ)うて、皆で大事に大事に看病しおいどん、なかなかその一(ひと)人(い)息子さんの病気は治らんて。どぎゃん良か薬ばやっても治らんて。青か顔ばして、ブルブル、ブルブル震えよんしゃって。そいぎぃ、ある人がねぇ、

「お宅の息子さんな病気は何(なん)でしょうかあ」て、聞きんしゃったぎねぇ、

「はあ、家(うち)の息子の病気ですかあ。千金丹ばやっても治らん。万金丹ばやっても治らん。億の病気ちゅうもんですたーい」て、言んしゃった。臆病ちゅう病気じゃったそうです。

そいばあっきゃ。

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P580)

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