嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかし。

お月さんとお日と雷さんが一緒に旅に出かけんさったて。宿に着いたぎぃ、じきお月さんの見えんされんちゅう。そいぎぃ、宿の者(もん)にねぇ、

「お月さんな、何処(どけ)ぇ行きんさったろうかあ」て、聞いたぎぃ、

「お月さんなねぇ、もう先ほど、『旅立ちしゅう』ち言(ゅ)うて、夜発ちしんさいたばーい」て、宿ん者の言んしゃいたて。そいぎぃ、こいば聞かれたお日さんな、

「そいぎぃ、私(わし)ゃ、朝発ち、早(はよ)う朝になったけん行こう」ち言(ゅ)うて、朝発ちしゅうち、決めんしゃったて。そいぎぃ、雷さんな、どがんかちゅうぎぃ、

「一(ひと)人(い)にいちなったいどん、私(わし)ゃ、夕発ちにしゅうかあ」て、言んしゃったて。

そいばあっきゃ。

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P578)

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