嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)
むかーしむかしねぇ。
偉い学者さんがおんしゃったて。
そいぎねぇ、
「何時(いつ)うでんものば言う時ゃ、
口ん中で七度(ななたび)舌ばグルーッと回してから、言うもんじゃあ」
て言うて、
「そそっかしくじきは言うことならん」ち言(ゅ)うて、
その学者さんが何時(いつ)ーでん教えおんしゃった。
そうしてねぇ、
その学者さんの言んしゃっにゃあ、
「誰(だい)でん、早(はよ)う舌ば回さじものば先に言うけん、
良かーこた言わん」て。
「禍(わざわい)のそいがもと」て、
ほんに偉か学者さんじゃったちゅうもんねぇ。
そいでねぇ、
「口は音を出(じ)ゃあてものを言うからねぇ、ほんに禍のもとで、
全部(しっきゃ)あから嫌わるっ」て。
「ところが、鼻はどぎゃんかていうぎぃ、
鼻は何(なーん)ても言わんて落ち着いとっ」て。
「しかし、良かー臭いをかぐことのでくっ」て。
「そいから、何か異様なことをかぐこともでくっ」て。
「そがん役目を持っとっ大事な役目ばい」て。
「そういうことでねぇ、口は何(なん)じゃい言うばっかいで損したい、
いろいろ我がに徒(あだ)になったいすることばっかいじゃいどん、
鼻はめったにそういうことはなか」て。
そいけん、神さんのチャーンと、
鼻は口よいか上ん段ちゅう。口の上ん方に鼻はつけんさったとよ。
そいばあっきゃ。
[〔笑話新二四 目と口の喧嘩(類話)]
(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P363)