嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかしむかしねぇ。

恐ーろし手と足と喧嘩しおったてぇ。

そいでもう、

足の言うにはねぇ、

「ああー、一日は全部(しっきゃ)あ歩き回って草臥れたとけ、

お前さん、手ばじき私の膝の上にまで手はのせて。

あれは止(や)めてくれ」て言うて、

恐(おっそ)ろしか腹かいたて言うもんねぇ。

そいぎ

手の言うには、

「お前さんが『痛い』と言うたら、摩ってやったり

『痒(かゆ)い』て言うと、掻(か)いてやったり。

そいから、

寒い時、足袋も履かせてやるじゃないか。

お前さんも言いたい放題、言うことないよ。

お互いさまだよ」と、言うたいどん、

「自分が辛かったり、疲れたりすると、もうお互いに言いたい放題。

いやー、手洗いにもしょっちゅう、日に何度でも行ってるよ。

そいなのに、

お前さんは私(わし)に手を投げかけたりするじゃないかあ」

て言うて、手と足と喧嘩しおった。

しかし、本当を考えればお互いさまです、て言うことです。

[笑話新二四 目と口の喧嘩(類話)]

(出典 蒲原タツエ媼の語る843話 P363)

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