嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)
むかーしむかしねぇ。
鰈【かれい】という魚【さかな】にはねぇ、
他の魚と同じごと目の両方に立派かとの付【ち】いとったてばーい。
当たい前じゃったばってん、
あったいどん親の言うぎ「右」て言うぎぃ、「左」て言う。
「向こうさい行け」ち言うぎぃ、後ろさい行く。
もう何【なん】言うても聞かんちゅうもん。
ブーって膨れて、親にはにらんで、
親の何【なん】てじゃい言うぎもう、
「好かーん」ち言【ゅ】うて、
そうして悪戯【いたずら】どんした時ゃ、
「ぎゃん、わやくすっぎいかんぞうー」て言うて、
注意は受けても、恐ーろしか酷う親ばメーッて、
睨【ねら】みおった。
あったぎねぇ、とうとう睨んでばっかいおったぎさい、
鰈の目は背中にくっ付いてしもうてさ、
悠々当たーい前には寝られんごとなったてばーい。
チャンチャン。
[四八 鳶不孝(類話)] (出典 蒲原タツエ媼の語る843話P17)