嬉野市塩田町 蒲原タツエさん(大5生)

 むかーしむかしねぇ。

神さん達が寄ってさ、お話会議ばしよんしゃったてぇ。

ところが、急な用事ができたちゅうもんねぇ。

「ありゃあ、急な用事ができたいどん、

誰【だい】ば使【つき】ゃあにやっぎ良かろうかにゃあ。

早【はよ】う行たて来【こ】んばらんねぇ」

て、ある神さんが言んしゃったてぇ。

そいぎぃ、もう一人【ひとい】の神さんが、

「あの、行くちゅうぎ蛙は、ピーンと、跳び方が上手じゃっけん、

休み休みピーンと、跳んじゃ休み、

ピーンと跳んじゃ休み休み行くもんなあ」て、言んしゃったて。

もう一人の神さんは、

「蟹はどぎゃんかーい」て、言んしゃったぎぃ、

その隣【とない】の神さんな、

「いんにゃあ、いんにゃあ。蟹さ、ゴソゴソゴソって、

追っ駆くっぎ逃げて行くどん、横道ばっかい行くばい。

あぎゃん横道さん逸【そ】れて来【く】っぎぃ、

ほんな目的の家【うち】さにゃ遅うなっ」

そいぎぃ、隅の方におんさった小【こま】ーか神さんのねぇ、

「そう、そう。フン、おったたい。

あの、良か塩梅【んびゃあ】んとのおっ」ち言【ゅ】うて、

「百足が良かよう。足ば沢山【よんにゅう】持っとっけん、

あいが速かさい、歩くぎぃ、言うことになっ。

「なるほど、百足が沢山【ゆんにゅう】足ば持っとんもん。

そいぎぃ、

百足どんに頼んで早【はよ】う使【つき】ゃあに行たて、

早う返事ば聞こうやあ」て、言うことになったて。

そうして、百足どんに、

「用事ば早う行たてくいろ」と、頼みぎゃ行きなったと。

そいぎねぇ、じき百足に行たてくいろう、

て言うことのわかったいどん、

「もう、行たろうーだい」ち言【ゅ】うて、行たてみんさったぎぃ、

まあーだねぇ、百足の上がり口、腰掛けてさ、

そうして草鞋【わらじ】ば履きおって。

「あらっ、まあーだ出かけとらんじゃったとなあ」て言うぎぃ、

「はい。そぎゃん私にお使いば頼まれましたけん、

じき出かきゅうで思うて、

あいからじき草鞋を履きおいましたいどん、

まあーだ半分しか履【ひ】ゃあておりません。

全部【しっきゃ】あ履くぎじき出かけて来ます」

て、言うたもんじゃっけん、

「こりゃあ、たまらん」ち言【ゅ】うて、

小【こま】か神さんな帰んさったちゅう。

そいばあっきゃ。

[四二 百足の使(類話)] (出典 蒲原タツエ媼の語る843話P12)

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