鳥栖市牛原町 羽根エンさん(明33生)

 むかし。

椎の実ば拾いに、三人連れ行かっしゃったち。

そしたら、袋に穴がほげとったらしかったたな。

それで、幾ら拾うてん、ボロボロ下に落てて、

溜まらんじゃったち。

じゃったら、小さなお堂が建っていたげな。

日の暮れて、たまらんもんで、

「ここに泊まろう」ち言うて、

三人は、ここに泊まったげなち。

さうしたら、

「ここに、泊めてください」と仏様に頼んだら、

仏様が、

「ここは、鬼が来る。鬼か来るけんでけん」

「鬼が来たっちゃ、暗うして帰られんけん、

どうでんこうでん、泊めてください」と言うて頼んだげな。

「そしたら、その時は、蓑と笠をやっとくけん、

鬼が来たなら、これをバサバサバサといわせて、

『コケコッコー』と、言いなさい。

そうすると、鬼が帰る」と言うて、

仏様の教えらっしゃったげな。

それで、そこに泊まっとったところが、鬼がでしたもんで、

鐘や太鼓やら、叩いてな、

ドンチンドンチン、言わせて鬼が来たげなち。

それで、今、いわせるじゃろう、と思うて、それで蓑と笠とを、

バサバサバサといわせて、

「コケコッコー。」と、

言うたげなら、鬼たちが、鐘やら太鼓やら、

いろいろなな物(もん)を、そこに捨てて逃げてしもうたげなち。

それで明こうなってから、みんな、そぎゃんとば、

持って帰って来たげなち。

そしたら、また、隣の子供がな、

「そんなら、自分たちも、行たちみよう」と言うて、

また、そこに行ったげなち。

そうして泊まったげなち。

そして、また仏様にそきゃん言うて、頼んだげなら、

「蓑と笠をやるから、鬼が来たときにゃ、これを、

バサバサいわせて、『コケコッコー』と言いなさい。」

と言うてじゃったげなけん、そん通りにして、

「クスクスクス。」

と笑うたげな。それで、

「こりゃ、鶏じゃなか。人間。」と言うて、笑うた声を聞いて、

きゃ裂いて鬼が、食べてしもうたげな。

それで、

「人真似はするもんじゃなか。」と言うことば、

言うてあっとでしょう。

(西南大の資料)

[二一二 栗拾い(AT四八〇)]類話

(出典 鳥栖の口承文芸 P126)

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