鳥栖市姫方町 前間スミエさん(大13生)

 むかしむかし、大昔。

爺しゃんと婆しゃんとおったげな。

婆ちゃんが川に行って、洗濯ばしよったげな。

そしたら、上ん方からブッカンブッカン、

あの、桃が流れてきたげな。

そいでから、婆ちゃんがおろたえて拾(ひる)うたげな。

家(うち)さい持ってきてね、

「真名板の上で、爺ちゃん、桃ば食べよう」

ち言(ゅ)うてからね、

あの、包丁ばかげたなら、割れて、

中から可愛いか男ん子のできたげな。

「名前ば何てつくうかあ」ち、言うたげなら。

「桃から生まれたけん、桃太郎てつきゅう」ち言うて。

そいでから(子ども持たんじゃったけん)、

「こーりゃーあ、よかったない」ち言(ゅ)うてからね、

あの、一生懸命、あの、太(ふと)らきゃあたげな。

そうしたら、どんどん太ったからね、

あの、ある日のこと、

「あの、爺ちゃん。旅に出してくれ」ち、

言(い)うたげなち。そいでから、

「どぎゃんすっかあ」ち言(い)うたら、

「鬼が島にね、鬼退治に行く」ち言(ゅ)うたちゅう。

「そんなら、仕方(しよう)なか。

あんたの言うごとさせじゃごて」

ち言(ゅ)うてから、あの、

言うこと聞いたげな、爺ちゃん婆ちゃんが。

そいでから、

「婆ちゃん、何(なん)かやろう」ち言(ゅ)うて、

「そんなら、黍(きび)団子(だんご)ば作ってやれ」ち言うて、

団子(だご)ば作ってやったげな。

串抜き団子(だんご)ば作ってやったげな。

そしてから、あの、背中にそいば風呂敷で包んで

背負(かる)うてね、鬼が島に鬼退治に行ったげな。

そいで、あの、次に行きよったら、犬が

「ワンワン」いうて来てから、

その団子(だんご)ば欲しがったげな。

「団子(だご)ばくるっけんで、お前(まい)、

つんのうち来(く)んならやろうだい」

ち言(い)うたげな。そうしたぎぃ、

「そんなら、つんのうち来(く)っ」ち言うたげな。

そうしたら、つんのうち行きよったら、

また行きよったら、猿が出てきたげな。

猿がまた、

「兄(にい)ちゃん、団子(だご)くれ」

ち言(い)うたげなけん、

また桃太郎さんが、団子(だご)ばやったげな。

「お前(まい)も鬼が島について来んなら」ち言(ゅ)うて、

あのー、連れて行たげなち。

そしてから、あの、また行きよったげな。

今度(こんだ)あ、雉が飛んできたげなち。

そして、また雉も欲しがったげなけん、

あの、雉にもくれたげな。

そしたら、三人お伴にしてからね、

あの、鬼が島に鬼退治に行ったげな、

ち言(い)うて話を。

鬼を退治してしもうてから、

土産ばいっぱい貰って、帰ってきたちかな。

[一四三 桃の子太郎(cf.AT五一三A)]

(出典 鳥栖の口承文芸 P109)

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