鳥栖市牛原町 滝尾マサエさん(明38生)

 むかし。

ある所に、お爺さんとお婆さんがおって、子供がなかった。

それで、

「みい、みい」と言って、蛇を育てよったそうです。

その蛇が、だんだん大きうなって、近所の人々が、嫌うて、

「あそこの爺さんと婆さんは、蛇を可愛いがんしゃるなら、

怖(えす)か」と言って、

近所のつき合いもあんまり、せんごつなったそうです。

それで、

「みい、お前は、

ほんに気の毒かばってん床の下に入っとってくれ」

と言って、床の下にいれたそうですたな。

そして、食べ物をやりよったばってん、何時(いつ)の間にか、

大きうなって、床の下に入れんごつなって、

床の下に入れとっても、

人が怖(えす)がるごつなったけん、村のはずれに、

大きな川があったそうですたな。

その川に橋があったそうです。

その橋の下において、

「食べ物を持ってくるけん、ここに住んでくれ。」

と言うて、食べ物をやったそうですたな。

ちょうどその時に、殿様が、眼病を煩ろうでじゃったげな。

そしたら、ある占い師が、

「村のはずれに蛇がおる。

その蛇の眼をとって飲ませるとようなる」

と言ったので、お爺さんとお婆さんの所に相談にやって来た。

「それなら、眼をやる。」と、

お爺さんとお婆さんが言ったので、

眼を貰(もろ)うて、殿様に飲ませたら、

片ひらの眼は、わかるごつなったそうですたな。

「もう一方、貰(もら)うわにゃ、片ひらが見えん」

それで、両方の目をやったら、

みいの目は見えんようになる。

それで、どぎゃんするじゃろうか。

すると、お爺さんとお婆さんが食べる面倒は殿様が、

一生みるとのことでそれならば、また、

「みいに相談せじゃ、」と言ったら、みいは、

「あんたたち方から、養のうてもろうたけ、

あんたたちが、一生みて貰われるなら、

自分は盲になってもよか。取ってください」

と言って、両方の目をやったそうですたな。

それで、殿様の目は、立派に開いた。

それでお爺さんとお婆さんは、

殿様から一生面倒をみて貰うた。

みいは、

「何時(いつ)が、日の入りは日の出かわからん。

だから、日の出と日の入りの鐘を鳴らしてくれ」と、

それで、今でも、己の鐘のいって鳴るそうです。

(西南大の資料)

[一四二 蛇息子(AT四三三B)]類話

(出典 鳥栖の口承文芸 P106)

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