鳥栖市神辺町 成富清二さん(明32生)

 むかしむかし。

田螺(たにし)が、山に行たとったげな、

そしたら、兎がピョコピョコ山から降りちきとったげな。

「兎さん、兎さん。お前は何処に行きよるかいっ、

俺(おり)ゃお前、水の中ぎゃおらにゃ、

喉の渇いてどうんこうんもならんけん、もう本当に困っとるが、

お前、何処に行きよるかい」って、田螺が言うたげな。

「そぎゃん喉ん渇くなら、

俺(おい)おいが連れて行こうだいっ」

って、言うたげな。

「そりゃあ、有難いこつ。

どぎゃんして連れて行たちくれるかいっ」

「俺が尻に、シッカリつかまれっ」

そいけん、田螺が尻にピタッと噛みつくと、兎は、

「良かかっ。ああ、良かっ」って、

言うてピョコピョコ山から川ん辺(にき)さい降りてった。

途中で兎が、

「嬉しいかん」って、言うたげな、そしたら、

「嬉しいとも何ともかんとも、

チョロチョロ、チョロチョロチョロ」

って言うげな、またピンコピンコピンコして、

一時、じいっときしてから、

「田螺どん。嬉しいかん」って言うと、

「嬉しいとも何ともかんとも、

チョロチョロ、チョロチョロ」って、

「連れて行たてもらうけん、嬉しいして答えんけん」

言うたげな。

ほしたら川に届いて、石跳びがあるけん、

そこば、兎がピョンコピョコンこして行きよったら、

田螺が、ポテッとおてたやん、

もうお陰で、水の辺(にき)にき来たけん。

もうそこで、良かとこ来たと思うて、

つかまえとっとば放(はひゃ)あて、

水の中にドポンッおてたやん、そいから、また兎が、

「嬉しいかん」って、言うたやん。

「何のそぎゃんいつまでも、嬉しいかん」って言った。

浅ましいもんは、人間と同じである。

(西南大の資料)

[動物昔話 その他]

(出典 鳥栖の口承文芸 P24)

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