鳥栖市桜町 橋本サモさん(明33生)

 それこそ、あるところ。

あるところに、表百丁裏百丁ていう長者。

それこそ、それだけの畑と田圃を持った長者の人が、

ズッーと日照り続きで、それこそ、もう雨が、

雨乞いの祈願をしたりなんかしますけど、

どうしても、雨が降らず。

ところが、大きな山に蛇が棲み込み、

棲んでいて、その蛇に、

「あお、どうぞ、あの、雨を降らせてくれっ」てと。

「あなたの願いを必ずるから」て言う。

その祈願をしたわけですね。

すったら、その長者には、三人の娘がおって。

そして、なんしたら、蛇の要求は、それこそ、

「娘を一人くれ」て。

だから、いちばん上の娘に、

「まっ、覚悟はしといてくれ」て、言いましたけど。

すたら、いよいよ雨が祈願した翌日に

ドシャ降りになったそうです。

そんで、その日照りがなんで、作物もよう出来て。

そいけ、蛇の方からは、毎日矢の催促で、娘をくれ。

したら、娘は、いちばん上の長女は、

「絶対行きません」て。二番目もやっぱりね、行かん。

すたら、三番目の娘がねぇ、

「みんなのためなら、自分が行きましょう。

で、その代わり、私に針千本ください」て。

針千本、それを貰って、蛇のところにね、行って、

で、まあ、蛇が大きな口開けて、迎えるわけですね。

すたら、娘がどうしたかって言うと、そな針をね、

口の中に、ドンドン、ドンドン投げ込んで。

そして、娘も助かり、まあ、蛇も、

こういう人間に対して、畜生でありながら、

こういうお願いごとをしたことは、

間違っていたから助けてくれって。

その針をとってもらった。

(西南大の資料)

[一〇一B 蛇聟入・水乞型(AT四三三A)]類話

(出典 鳥栖の口承文芸 P95)

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