鳥栖市古賀町  仁田留四郎さん(明34生)

 狸の、ありゃ七化け。

狐は七化けて。

狐の方が七つしか化けんげな。

狸は、八つ化けるげな。

それで、狐の七化け、狸の八化けとも言うわけ。

そいで、二人は会うたて、狐と狸と。ほいから、

「こりゃ、お前はよう化くるげにゃ。

そいで何(なん)がいちばん得意かい」

「私(わし)ゃー、もう大坊主に化けるのが一番得意だ」て。

「ほー、よーし。そんならいっちょ化けてみんか」て、

狸の方が坊さんに化けたっちゃ。

ところが今度は、

「お前、何に化くるかい」て。

「両方化けたら話にならんぞ」て。

「そのくらい、大きな坊主化けたら、大抵強かろうでぇ」て。

「あー、強か」て。

「それなら、今日は、俺(おい)は一日背負(かる)うて歩け」ち。

それだから、よーし、来たちゅうところで

一生懸命に一日狐を背負って、諸所見物して歩いた。

ところが今度はもう、

「お前が番ぞ」て、狐にね。

「お前、何に化くるか」て。

「やー、お前は強か、強かー」

「お前は強か。俺は、そやー強うなかけん、

俺は、そいなら、ほんに面白かことばしてみせよかのー」て。

面白いことをしてみようということで、殿様の通り、そいで、

「佐賀からね、ズウッと、田代まで、殿様の道中をしてみせるぞ」と。

「だからお前は、この朝日山、あの朝日山の所で、

お前ちょっと、高いところにかがんで見よれ」

それだから、

「よーし、きた」

あくる日、待っとるというとね、午前十時頃なると、

殿様の通りがやって来た。

あれがね、十万石以下の殿様は、

「下にー」と一遍ぎりじゃ。

十万石以上の殿様になると、

「下にー、下にー」と二声。

で、さいで、二声かかって来たもんじゃけん、

あえーら、こりゃ佐賀の殿様鍋島公のお通りじゃということで、

ジイーッと高い所から見ておった。

ちょうど、前をかごが通る時に、

「おーい、野狐どん。うまいじゃ、うまいじゃー」

て、やったっちゃけん。

それだから、お側の家来がちょっと、こう上を見たところが、

狸が高い所で、ヒョッコリしとる。

ほいで手を振って、

「野狐どん、うまいじゃ、うまいじゃー」

て、やったもんじゃけん、

「おい、鉄砲係うてぇ」て。

そいだから、殿様の後ろの方におる鉄砲隊が

ドーンって撃ったっちゃ。そいだから狸はころり。

とこよがね、狐は先のことを知っとるち。

明日あることを知っとるわけじゃ、狐は。

それって、狐がね。

だから明日は殿様のお通りかあるから、そいで、

それを狐は、もう自分の所に行ってわからんわけ、何処行ったか。

ところが、狸はそれをほんまに受けたもんじゃからね。

本当の鉄砲で殿様の家来から、

「ドーンと撃たれた」ちゅうと言う話。

(西南大の資料)

〔動物昔話、その他〕

(出典 鳥栖の口承文芸 P90)

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