田代代官町 友清トリさん(明42生)

 あるむかし。

大きな金持ちの白い屋敷に狐が棲んでおったそうでございます。

その家主の山にも、狸がおったそうでございます。

お天気のいい春日和には狸やら、狐が散歩に出て会うことがあるそうです。

その時、お屋敷の狐が、殿様の話に、

「狸狩りに行こう、犬を連れて行こう」という話を、

聞いたそうでございますので、狐と狸が会った時に、

「お前、山に狸狩りに行くような話を殿様がしておったから、

何時か犬を連れて、家来どもが狸狩りに行くかもしれんぞ」と話ながら、

「二人で共に今日は、化けぐろうをしようではないかい、そら良かろう。

そしたら、久しぶりに饅頭屋さんに行って俺が饅頭を代えて

()うて来るから、お前が金の茶釜に化けてくれ」

と言う話が決まりまして、ひとりが小僧になって、

ひとりが金の茶釜に化けたそうです。

そして、町の饅頭屋さんに行って、

「今日は供養があるのに、饅頭がいりますけれども、

饅頭の金が無いので、金ができるまで、饅頭を箱いっぱい、

この金の茶釜に置いて行きますので、貸してください」と、

言うところで、その金の茶釜を置いて、饅頭を背負(かろ)うて、

狐と狸の出会()うとこに、帰って来るように、決めていたそうです。

それで、狐が金の茶釜になりましたので、店の人は大喜びで、

こんなもの饅頭と代えて運が向いた、と近所の人を呼んで、

お茶を飲んで、床の間に置いてあったその金の茶釜を転がし、

ことがして眺めていたそうでございます。

それで、ホッとした時に、

「まあ、さあ、お茶を一杯」と言うようなことで、

お茶を飲んでおられたすきに、お縁から、

走って会うところまで、帰って来たそうです。

「あーあ、きつかった。お前は、行きがけに

俺を金の茶釜に背負(から)って行って、

帰りは饅頭の匂いききながら、ここまで来た。

俺は、床の間で、ドンドン皆に転がされて、

みんなにまわされる間、シッカリもう、

金の茶釜に化けておるには、大変きつかった。

さあ、饅頭を分けようか」と言うところになって、

ひとつはしたが、出たそうです。

それで、俺がきつかったから、俺がひとつ。

うんね、行き戻り背負(かろ)うていたから俺がひとつ、

言い争いができた末、狐が、

「よし。そしたらお前がひとつ余計に取っていい代わりに、

俺が犬を連れて、殿様と一緒に狸狩りに来るから、

天気のいい日は墓詣りに出て、待っておろ」

そう言って、別れたそうでございます。

ところが、本当の殿様の家来が犬を連れて

狸狩りに行きましたところが、どうしたことか全部の、

子供から親まで、狸が出ておったそうでございます。

それで犬が、もう早速、吠えて追い出す間もなく、

いちばん大きな狸の頭にかぶりついたそうです。

次から次へと頭をくわえてふるのに、他の狸が、

「あーら、ひとつぐらいで、そんな無茶なことするな、

もう俺が悪かった。また会()うた時は、

またこんなことがあったら、お前に余計にやるから、

ほんなことしちゃ、こっちが命がなくなるぞ」と、

言うたそうでございます。

それで、欲は失敗のもとでございます話を聞きました。

(西南大の資料)

〔動物昔話、その他〕

(出典 鳥栖の口承文芸 P89)

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