東川登町袴野 南 シクさん(明34生)

 あるところにですねぇ、

よう金持ちさんのおんさったところに、

もう泥棒がほんな床の下に昼から入(はい)り込んどって、

もう晩に休みんさった時、盗(と)ろうで思うて、

ジーともようば聞きおってですねぇ。

そして昔ですけん、もうくうっと昔ですけん、

婆(ばば)さんが晩に夜(よ)鍋(なべ)に

木綿車ば引きよったですねぇ。

その泥棒が入っとっとば知らんで、

そら出た 引っ込んだ

そら出た 引っ込んだ

ち言うて、もうズーッと、こうこうして引きおんさったですもん。

そいぎあの、泥棒はもう、あら、私がここに入っとったとば、

良う見られんとっばいねぇ。

こりゃあもう、遅うまでおられんちゅうて、

またジーと、出たと言う話も聞きおりました。

(出典 未発刊)

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