東川登町袴野 南 権平さん(明31生)

 一休和尚さんが、その、ある部落に行ったてぇ。

そうして、あっち泊まっさったて話やんなたあ。

そいでその部落の者が、

「あっこにゃあ夜、泊まいゆん者がおらん」て。

「化け物の毎晩毎晩出て、もうあつこさい泊まいゆん者なおらん」て、

言うたちゅうもんなたあ。そいぎ一休和尚が、

「化け物の()んないば、化け物、どういう化け物の()いよい、

(おい)が行たて確かめ認めて来ます」と。そいぎぃ、

「そうですか」て。

そいぎぃ、ちょうど化け物が出て来たちゅうもんなたあ。

ちょうど青か火のパーッ燃え上がって。

そうしてこうして見んさっぎぃ、もう(なん)じゃいろうこう枝のちいたごたっとの、

そけぇはい下がっちゅうもんなたあ。そいぎぃ、一休和尚さんがその、

「そこに、そこにおる者は何者か」と、こう言いんさったてぇ。

そいぎぃ、あの、その化け物が、

「両眼を手に上げ、はっそくなし」て、こう横にすっもんじゃっけん、

その(がね)ていう手はなたあ、こう青か血の()んなたあ。

あの、ぶつのたつとは、ありゃあ暗すみは、青か血の()ですよ。

そいをしおっとば、化け物の()るとか、太か蟹の。

そう言う風なことも聞いたこともござすっ。

(出典 未発刊)

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