川副町大詫間十三区 池田トメさん(年齢不詳)
あるところの、おんじさんのなたあ、
久留米さい行きよらしたて。
そうしたいば、夏の暑か時なたあ、
あの、朝早う、あの、嫁くさんの
久留米絣巻きよらしたち。
そうしたいばなたあ、そいが久留米絣ば
巻きよらしたよかばってんもう、
昔ゃモンペもなしなたあ、
こうひっと出ゃあてくさんたあ。
そいぎぃ、おんじさんがなたあ、
「ほんに、早う出ゃあとんさんじゃっかんたあ」
ち言わした。
「なあーい。朝かげんのうちなたあ。
暑うなっけん、出さんま」ち言うて、言わしたち。
そいぎぃ、わがこたなたあ、反物にゃあて。
向こうは下ン口ひっと出ゃあて巻きよらすて。
そがんなたあ、考え違ゃあしてくさんたあ、
「ほんに、あぎゃん物なたあ」ち、言わしたいば、
「なあーい。こりゃ、二反続きたんたあ」ち、
言わしたち。そいぎぃ、毛の長かとばなたあ、
「二反続きたんたあ」ち。そいぎぃ、
「ほんに、黒い物じゃんかんたあ」ち、言わしたち。
「はあーい。昔の三銭絣たんたあ」ち、言わしたち。
そいぎもう、嫁くさんな、わが、
そがん言われよった知らじなたあ。
反物ち思うてくさんたあ。そがん言わしたちたんたあ。
(出典 未発刊)
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