鍋島町岸川 中村 初さん(明41生)

 仲立ちして、ちょっとおとなしか男やったばってん、

嫁御ば世話したてちゅうたんたあ。

そしてその、一年ばかりしたら、子供のできたて。

そいぎぃ、子供ができたぎぃ、聟さんがなたあ、

子供の寝ているところの枕元に行って、

必ず、自分の持ち物と比べるてったんなたあ。

そいぎしてみると、息子ンととすると、

(こま)かもんじゃけん、

「がん太かとのできたとないば」と言うて、

いっちょんせんて。

そいぎぃ、嫁さんが仲立ちさんに、

「がんして、子供が生まれたぎぃ、

いっちょでん近づいてくれんけん、

私は帰ろうと思うとんさったもんじゃあけんが、

と言うことで、若嫁さんが仲立ちさんに、

ぼた餅を出したちゅうてったん。

そいぎぃ、仲立ちさんが、ぼた餅を食う食う、

「こりゃあ、気色(きしょく)美味(うま)かもんにゃ。

こがん美味かぼた餅がああもんか。こりゃあ、

一人の子持ちのボボしゅうごたっじゃっかあ」と、

言いなったてったん。そいぎ亭主が、

「ひとりの子持ちは、そがんあろうかあ」

と言って、相談に来たてったん。

そいぎにゃあ、仲立ちさんが、

「折角、子供のできて、どうしゅうあんもんかあ。

そいないば、(おい)が近づくごと言うとくけん、

今晩、ぼた餅をしとけぇ。そして、ぼた餅をした上、

(きわ)に砂糖を置いとかい」ち。

「それでよかかんたあ」

(おい)が言うごとしとけぇ」ぼた餅をしとったぎぃ、

その晩、仲立ちさんが来てくんさったもんじゃあけんが、

ということで、若嫁さんが仲立ちさんに、

ぼた餅を出したちゅうてったん。

そいぎぃ、仲立ちさんが、ぼた餅を食う食う、

「こりゃあ、気色に美味かもんにゃ。

こがん美味かぼた餅がああもんか。こりゃあ、

一人の子持ちのボボしゅうごたっじゃっかあ」と、

言いなったてったん。そいぎ亭主が、

「一人子持ちは、そぎゃんあろうかあ」と言うことで、

その晩から嫁御とやい出したと言う風に、

そがん一人子持ちは良かちゅうてたん。

(出典 未発刊)

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