佐賀市大和町春日地区(尼寺)森永シゲさん
むかーし、蛙(びっきー)の子はなた、お母(か)さんの言いんさっことの反対ばっかいしよったもようじゃなた。「山さい行け」ちゅうぎ、川さい行くちゅうて。
もう、何でん反対ばっかいしよったけんが、もう、お母さんの死になさっ時になた、「私(あたし)が死んだらね、川に埋めてくれんね」ちゅうて言いんさったもようじゃなた。「川へ埋めろ」ちゅうたら、おおかた、山へ埋めはせんじゃろかて、思うてなた。
そいぎ、そがん言うて死にんさったので、もう、その、蛙がなた、「今まで、お母さんの言うこときかじ、もう、反対ばっかいしよったけん、お母さんの死にんさった時ないとん、本当(ほん)なごて、あたいまえ、お母さんの言うこときかじゃぁ」ちゅうて、川端(かわばた)に埋めたもようじゃなた。
そいぎなた、雨の降ってなた、川ん水のいっぱいなっぎなた、「川に埋めたけ、お母さんの、ほんに流れどましんさらんじゃろか」て言うて、ギャァギャァギャァて鳴くて。
雨の降ろうごたっ時は、蛙がそがんして鳴くて。
そいばっきゃ(それでおしまし)
(出典 大和町の民話 P15)