南里ヶ里 諸隈常雄さん(明45生)
歌にくさんたあ、
子ば捨つる身の輪の嘆き如何にせん
捨てずばなどて親を助けん
ち、聞いたことはあっばんたあ。
そいが、子ば捨っ時の別れにその歌ば
綴ってやってあったわけ。
そいぎんと、その子ば詠んでくさんたあ。
良か坊さんになって、
何処(どけ)ぇでんお説教すっ時に、お説教の始まいに、
子ば捨つる身の輪の嘆きは如何にせん
ち、その歌ば詠んでから、お説教ばしよったわけ。
そうして、親に会うて、尋ね尋ねて何十年で、
その親が、その参詣人の話ば聞いて、参詣人の、
「ほんに、あの坊さんのほんにむぞうか」
ちて、言うて、聞いて、
「何処でお寺であいよった」ちて、言うて、
その婆さんな休んどっ時に聞いて、夜さい行たて床下からなた、
聞きよっぎとは、その坊さんがお説教の初めに、
「子ば捨つる身の輪の嘆きは如何にせん」ちて、言いなっので、
上の句ば言いなっぎぃ、下の句ば、そのお母さんが、
「かついで来い」て言う。
そいぎそこで、親子の対面の出来て、
何十年ぶりのところの話やったことは聞いとった。
(出典 三根の民話 P136)