市武 大川ミノさん(大3生)
床屋さんの、あの、どがしこ橋ばかけたっちゃさい、崩るっけんね。
そいでその、
「村人、寄れ」て、言んさったじゃろう。
「人柱ばそのね、すっぎ良か」ちて。
そしたぎと、床屋さんがその、誰(だい)ばしゅうもなかったけんが、
「その、横ぎれ使(つこ)うとっ人(しと)がせんばならんば」て、言うたて。
そしたぎとその、誰でんちょっとねぇ、着物ば解(ほど)いて見たやろう。
そうしたら、襟芯(えりしん)に横ぎればね、床屋さんの。
そいけんが、床屋さんがならんばやったて。
そいで、本(もと)ば正すぎと奥様がちゃんと、
そぎゃん人ばすっこったなん。
自分方が床屋さんじゃっけん、その、あんたがならんば、
ちゅうごたっ風で、その、入れてあったらしか。
床屋さんが、そぎゃん人柱にになんさったちゅうたい。
そいで、きれいか娘さんが、ものば言わんごとなんさったて。
そいで、お殿さんから縁談のあったばってんね、
ものば言いんさなかけんが、
「困ったこっ」ち言うて、その、誰(だい)でん、皆寄ってから、
言わしゅうですっばってん、言んさなかったて。
そいで、
「なし、言わんね」て、言んさったぎぃ、
雉子も鳴かねば撃たれもすまい父は長良の人柱て、書きんさって。
そいで、その、お殿さんのお嫁さんに行きんさったて。
(出典 三根の民話 P113)