持丸 松永チヅ子さん(大11生)

 ある息子はお母さんをおぶって、焚物ば、こうね、

折って捨てて行きよったばってん、

「お前や、何であの、お母さん捨てよっかい」て。

「お前戻って来(く)うでてじゃろう」て。

「なんのかい。お前がね、帰っ時には、

道ば迷わんごと、そぎゃん折って捨てて帰よった」て。

どぎゃん思たっちゃね、捨てて置きえんて。

そいで、連れて帰ってね、縁の下にね、あの、隠しとったち。

そうしたりゃその、

「灰で縄ばどうしてなうかい」ち言うて、

誰(だい)でん持って来てのなかったばってん、ある一人息子がねぇ、

「あの、お母さん、『灰で殿さんののうて来(け)ぇ』て、言いなったけん、

どぎゃんすっぎよかやろうかあ」て言うたら、

「そや容易(たやす)かこつ。縄ば焼くぎにゃあ、縄のうたごとなっけん、

そいば持って行け」ち、言いなったよね。

「お前は偉いことばして来たねぇ」て、言いなったりゃ、

「誰(だい)から聞いたけぇ」ち、言いなったりゃ、

「年寄りのね、おふくろがね、こぎゃんしてね、あの、

『捨てろ』て、言んさった」て。

「私ゃどぎゃん思うても、捨てきらん」て。

「そいで縁の下にね、隠しとっ」て。そいで、

「ご飯ば与えよったりゃ、こぎゃんとの殿さんの言いなったけん」ち言うて、

「年寄りが、その、知恵」て。

「そいが、ぎゃん知恵を貸す」て。

そぎゃん、聞きよったですよ。

そいで、あの、

「年寄りば捨てんようになったて、大事にするようにね、なった」

ていうことをね。

(出典 三根の民話 P95)

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