神埼市神埼町小渕 佐野ハツさん(明12生)
夫婦連れ里帰りして、そしたりゃ、その、
お嫁さんの家に行ってお団子ば美味しゅうして、食べさせんさったらしいですね。
そいぎもう、家帰ってもこぎゃな団子ば俺(おい)にもして、
帰ったこんなお母(か)さんに食べさせろと、言おうで思うて、
帰って来(き)おらしたぎい、そしたぎい、その、ちった馬鹿だったでしょう。
その智さんは。そいぎもう、帰って来おったぎ忘れんごと、
「ダゴ、ダゴ、ダゴ、ダゴ」て、言うて来おったぎい、
「ピーン」と、溝か何か跳んだぎい、それ忘れて、
「ピントコ、ピントコ、ピントコ」言うて、家まで帰って来て、
「おうーい、お母さん。ピントコばいっちょ〔ひとつ〕食べさせんかい」ち。
「『ピントコ』ち言うぎい、何かい」ち。「『ピントコ』ち言うぎい、ピントコさーい」
そして、コツーンと叩いたいば、瘤のできたらしい。
「団子ごたっ瘤〔ようなこぶ〕のできた」
「ううーん。その団子、団子」て、言うたてっちゃん。
〔大成 三六二A 団子聟(AT一六八七)〕
(出典 吉野ケ里の民話 P128)
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