唐津市馬渡島二松 牧山トモさん(明12生)

 若い衆の仲間がそのまあ、

「泥鰌汁を炊いて、食べよう」て言うて、炊きおったち。

そうしたところが、その、勘右衛門さんはお豆腐を買()うて、

「俺も加えよう」て言うて、そいでわがどんも、えて食ぶって思うて、

「なんなしてこい」と言われたところが、

知りもせずに泥鰌炊きよった水の中に豆腐を入れた。

そうしたところが、その熱うなって、

泥鰌はみんなお豆腐の中に入(はい)り込んでしもうて。

そいで炊けた時ゃあ、

「おおきにじゃった。お世話になって」ち言()うて、

その豆腐はいっちょ取って逃げた。

そして後をみれば泥鰌は一匹もおらんて。

そうしてその、勘右衛門がそういうふうに知っとるばってん、

それまで知っちょるまでな、若い衆が宿を貸したところが、

「いっちょもわがどま泥鰌は口に入らんじゃった」、て言う話ゃ私は聞きました。

(出典 未発刊)

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