唐津市肥前町納所 井上幸一さん(明20生)
舅じゅおうのところに行たて、
団子汁というとば炊いちょらしたちゅうもんなあ。
そうしたら美味かちゅうもんなあ。
そいば貰うて来とらした。
そいば家さい行建て食わせてもらおうで思うち、
「団子(だご)よ、団子よ、団子よ」て言うち、行きよらしたちゅう。
ところが川渡りて、昔ゃつきあいつきあいして、
そいば渡りよってピントコショて。
そしたところが、ピントコショになって、
「ピントコショ、ピントコショ、ピントコショ」て家まで言うて、
来らいたちゅう。
そいから家さい帰(きゃ)あって、
「婆さん、俺(おれ)、ピントコショ汁ば食わせんかい。大抵、美味(うま)かったいどん」
「『ピントコショ汁』て、何のことかい。
『ピントコショ汁』て、あるもんかい」て。
「いんにゃあ、『ピントコショ汁』て。美味かだんじゃなかった」
「そりゃあ、知らん。俺(おど)ま、『ピントコショ汁』て、そりゃ知らん」ち言うち。
「えぇ、こん畜生(こんちくょう)、こいが」ち言うちから、竹ぇあで叩いた。そうしたら、
「ああ痛か。団子のごたっとのできた」
「うーん。その団子、団子」て、言うてあった。
(出典 未発刊)