東川登町袴野 南 権兵衛さん(明31生)

 あの、私どんがなたあ、あに、爺さんの妹聟が

瓦屋法道印山法師(やんぼし)ちゅうておったわけたいなたあ。

あの、そのひとが旦那さんのかかえ山法師さんじゃったてぇ。

かかえ山法師さんでおっとこれぇ、今度あその、

十左衛門さんがおいためで、

夜中になっぎにゃご祈祷に行くという便りば聞いたわけ。

法道印山法師が。

そいぎぃ、もう時分などうしてもう、明かりゃあ、暗隅んごとしとるもんじゃっけん、

ちょうど表ん所(とけ)ぇ、袈裟ばちゃあんと置ぇたとに、座敷ん所(とけ)ぇ、

腰巻きのあったらしかたいなたあ。

そいばその、袈裟と間違(まちご)うて、腰巻きば持って行たてぇ。

法道山法師が。

そいぎ今度(こんだ)あ、あの、ご祈祷してしよらしたいばその、若旦那さんが、

あの、こりゃにゃあ、袈裟じゃなかごたっちゃあ、おかしいなかかなあと思うて、

「法道印、袈裟かい」て。

そいぎぃ、いままではにゃあ、そがん袈裟かいて尋ねられたごとなかいどん、

こりゃあたいへんと思うて、ヒョッとこう、あったいどんなたあ、あの、

ほんな袈裟の根つうの所(とけ)ぇ腰巻きば置(え)ぇとったけんなたあ。

そいばその、被ってしおったてぇ。

あったいば、

「本当の本当の、その、袈裟ばい」て、言われたてぇ。

「本当の袈裟であります」て、こう言うてぇ。

そいぎぃ、そのままでじぃっとして。

そいから、そん晩戻ったいば、

翌日(あした)はお咎(とが)めのきわすみゃあかにゃあと思うとったいば、

何とも言うちゃこんじゃったけん、

「やっぱい間違(まちご)うたんの何ののて、言うないば咎(とが)めのくうだいどん、

もう言いよっぎぃ、咎めはくんみゃあごたっ」て、話は聞きおったですよ。

(出典 未発刊)

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