唐津市相知町伊岐佐上 能隈 進さん(年齢不詳)

 むかし、むかし。

唐津の裏町というところに勘右衛門という男が往んでいた。

勘右衛門は、いつもいつも嘘をつくことをよく考えつく男だから、

人々はだまされたり馬鹿な目にあわされたりしていた。

勘右衛門には、金持ちで欲深かなおじさんがいた。

勘右衛門は、そのおじさんをだまして

金儲けをしてやろうと思っていた。

そこで、勘右衛門は、

おじさんが日頃から馬好きであることを知っていたので、

元気のないくたびれている馬をだまして連れてきた。

勘右衛門は馬の尻の中に銭をつめ込んで、

おじさんの家へ行った。そして、

「おじさん、この馬は銭糞たるっ」と、勘右衛門が言うと、

「そんな馬の尻から、なんの銭糞の出(じゅ)うか」

と、おじさんが言うと、

「そんなら、証拠みちょってんのう」

と、勘右衛門は馬の尻をポーンと叩いた。

すると、銭が糞と混じってポロポロと出てきたから、

それを洗って見せたら、

「こりや、偽せ金じやろう」と、おじさんは言った。

しかし、本当の金であったので、

おじさんはその馬が欲しくてたまらなかった。

とうとう、おじさんは勘右衛門がだましていることも気づかないで、

その馬を買った。

おじさんは勘右衛門から買った馬が銭糞を出すようにと、

たくさんのえさを食べさせた。

しかし、馬は銭糞は一つも出さなかったので、

「また、こりゃ勘右衛門からだまされたばい」と、

くやしそうに言った。

もう、そのときは勘右衛門は銭を取って逃げ去っていた。

欲深かなおじさんは

本当にだまされ損の身の上になってしまったとさ。

(出典 佐賀の民話第一集 P175)

標準語版 TOPへ