武雄市小舟津 副島武敏さん(大13生)
その、なるほど、あの、蟹はあの、柿の種をなた、
「早く実のなれ柿の種」ち言(ゆ)うて、
こう大きくなって柿の生(な)ったぎぃ、猿が柿ばちぎいや来て、
その美味(うま)かとばわが食うて、青かとばっかい袋に入れて落としたけん、
蟹はそれを、あの、自分の穴に引き入れて、待っとたぎぃ、
猿がまた、貰いぎゃ来てなたあ、その、
「どうしてもその、柿が欲しか」ち言(ゅ)うて、尻尾ば入れて、
「早(はよ)うやれ。早うやれ」て、しよったぎぃ、蟹がその尻尾ば挟んだそうで、
その、猿は尻尾の痛かもんじゃあ、
「早う離せ。早う離せ」ち言うぎぃ、
「いや、もう離さん」ち。そいぎぃ、
「その猿の毛ばなたあ、やっ」ち言うたぎぃ、
あの、蟹が尻尾ば離したそうですけど、そいが代わり猿の毛ば貰ったと。
猿に毛ば貰ったとが、今、川蟹、ツガネにゃ、こう毛の生えとっですたい。
あいが猿の毛。
〔大成 二四 猿蟹柿合戦(cf.AT九C)〕
(出典 未発刊)
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