三田川町吉田 大川ハツエさん(大8生)

 昔は、よう騙されよんさっござった。

盆とお正月にほら、歩いて行くでしょうが。

そいぎぃ、嫁さんの所までお爺ちゃんの行きよんさったわけ。

そいぎぃ、勘太郎ちゅう所のあっわけですよ。

勘太郎に林のあっじゃんね。

勘太郎の弥八兵衛で、おったらしかですよ。

その人が、もうずうっともう、(なん)じゃい重箱持って

行くぎにゃ騙して、前に行き後ろに行き、チャポチャポチャポちて、

お盆んの時ゃもう田圃の中ば、シュシュシュシュシュ行くらしかです。

そいぎぃ、お爺さんがね、ほんにうちのお爺さん信心深かったもんね。

そいけん、うちにゃ、どがんしたっちゃその、騙しきやあせん、

ち言う自信ば持っとんしゃったわけよ。

そして、御燈(おしょう)(めょう)を必ず自分は唱えてから行くて。

そいけんが、絶対うちにはね、その騙しきらんて。

そぎゃん御燈明ちゅうとはね、もう大事なことじゃいけんね、

御燈明ばずうっと唱えて()っぎにゃあね、

自分は何でん、重箱でん盗られんでん何でんせんて。

大抵、盗られよんしゃったらしか、もう持って行きよっぎね。

そげん言うて話しよんしゃった。

(出典 未発刊)

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